「M&A補助金の申請は行政書士に依頼できるのですか?」
「M&Aだから行政書士は補助金申請をしてはいけないのですか?」
「行政書士に申請書を作ってもらうと違法ではありませんか?」
事業承継・M&A補助金について調べていると、このような疑問を持たれる方が少なくありません。結論から申し上げます。行政書士にM&A補助金の申請内容の作成を依頼することはできます。しかも、これは単なる一般論ではありません。2026年9月に公表された「事業承継・M&A補助金 16次公募」の公募要領には、申請者が行政書士または行政書士法人に申請の作成を委任する場合の取扱いが明記されています。
一方で、行政書士に支払う「補助金申請の作成費用」は、16次公募の専門家活用枠における補助対象経費には含まれません。この2つは全く別の問題です。
本記事では、
- 行政書士はM&A補助金申請をできるのか
- 行政書士に依頼すると違法なのか
- 行政書士報酬は補助対象になるのか
- M&A支援機関・税理士・弁護士等との役割分担
- 行政書士がM&Aで実際に支援できること
について、16次公募の公募要領を中心に整理します。
※本記事は2026年9月30日時点で公表されている情報を基に作成しています。補助金制度は公募回によって要件・対象経費・申請方法等が変更される場合があります。実際の申請に際しては、必ず当該公募回の最新の公募要領、申請手引き及び事務局の案内をご確認ください。
結論:M&A補助金の申請内容の作成を行政書士に依頼できます
まず、最も重要な点です。「M&A補助金だから行政書士には依頼できない」という理解は正しくありません。
16次公募の専門家活用枠の公募要領には、Jグランツによる申請について、行政書士または行政書士法人でない者が、申請者に代わって有償で申請の作成を行うことは、行政書士法違反に該当する可能性がある旨が明記されています。さらに、申請の作成を行政書士または行政書士法人に委任した場合に、その委任に関する資料を提出することも制度上予定されています。
つまり、16次公募では、「行政書士が申請内容の作成を行うこと」そのものが制度上想定されています。これは非常に重要なポイントです。
日本行政書士会連合会も「補助金申請」を行政書士の業務として明示
この点は、事業承継・M&A補助金だけの特殊な話ではありません。日本行政書士会連合会は、補助金申請について、
- 補助金制度の提案・コンサルティング
- 事業計画書の作成支援
- 電子申請(GビズID・Jグランツ)の導入・操作サポート
- 実績報告・交付請求手続
などを行政書士の支援業務として明示しています。さらに、2026年9月現在、日本行政書士会連合会の制度PRページでも、「行政書士は、補助金の制度内容を分かりやすく説明し、事業内容に合った補助金の案内から、申請書類の作成、採択後の実績報告書の作成まで一貫して事業者をサポートする」と説明しています。
したがって、「行政書士は補助金申請を行う資格ではない」という一般的な説明は適切ではありません。
「行政書士の報酬は補助対象外」でも、行政書士に依頼できる
ここが最も誤解されやすいところです。16次公募では、「申請の作成を行政書士(又は行政書士法人)に委任した際に要する費用」は、専門家活用枠の補助対象経費には含まれないとされています。
しかし、これは、「行政書士に依頼してはいけない」という意味ではありません。正しくは、「行政書士に依頼することはできる。しかし、その申請作成費用については、今回の補助金の補助対象経費としては認められない」ということです。この区別は非常に重要です。
「補助対象外」と「業務としてできない」は全く違う
補助金制度には、
① その仕事を誰に依頼できるか
② その専門家への報酬を補助金から支出できるか
という、別々の問題があります。例えば、ある専門家への報酬が補助対象外であったとしても、その専門家に依頼すること自体が禁止されているわけではありません。M&A補助金についても同じです。行政書士への補助金申請作成報酬が補助対象外であることと、行政書士が補助金申請を支援できることは両立します。
むしろ16次公募の公募要領は、行政書士による申請作成を明確に意識しています
16次公募の公募要領には、Jグランツによる電子申請について、申請者自身がその内容を理解し、確認した上で申請することとされています。同時に、行政書士(又は行政書士法人)でない者が、申請者に代わって有償で申請の作成を行うことについて、行政書士法違反の可能性がある旨が記載されています。
これは、「申請者本人の責任」と「行政書士による申請内容の作成支援」を両立させる制度設計と見ることができます。したがって、行政書士に依頼した場合でも、
- 申請者自身が事業内容を理解していること
- 申請内容を確認すること
- 補助事業計画について責任を持つこと
は重要です。行政書士に「丸投げ」するという考え方ではありません。
16次公募の申請受付期間
16次公募の専門家活用枠では、申請受付期間が、2026年10月2日(金)~2026年11月6日(金)17:00とされています。申請方法はJグランツによる電子申請です。また、GビズIDプライムの取得には一定の期間を要する場合があるため、まだ取得していない事業者は早めの準備が必要です。
16次公募「専門家活用枠」で対象となる主な専門家費用
専門家活用枠では、M&Aの実行に伴って必要となる様々な専門家費用が対象となります。例えば、
- FA・M&A仲介に関する費用
- 企業価値・事業価値等の価値算定費用
- デューデリジェンス費用
- 契約書等の作成・レビュー費用
- クロージングに向けた手続費用
- 不動産鑑定評価費用
- 不動産売買に関する登記費用
- 定款変更等の登記費用
- 許認可等の申請費用
- 社会保険労務士への費用
- セカンドオピニオン費用
などが挙げられています。ここで注目したいのが、「許認可等申請費用 行政書士」という項目です。16次公募の補助対象経費の説明では、最終契約書に基づいて取得すべき許認可等の取得に係る費用について、支払相手として行政書士が明記されています。つまり、M&Aにおける行政書士の役割は、単なる「補助金申請の書類作成」だけではありません。
M&Aでは「許認可」が非常に重要
M&Aでは、会社や事業を買えば、そのまま同じ事業を続けられるとは限りません。例えば、
- 建設業
- 運送業
- 産業廃棄物処理業
- 介護事業
- 旅館業
- 宅建業
- 飲食業
- 古物商
など、許認可・登録・届出が事業の基盤になっている場合があります。株式譲渡なのか、事業譲渡なのか、会社分割なのか、M&Aのスキームによって、許認可の承継・変更・新規取得等の取扱いが変わる場合があります。したがって、「M&Aを契約する前から許認可を確認する」ことが重要です。
M&A補助金だけでなく「M&A後」まで見ることが行政書士の強み
M&Aでは、補助金申請が終われば仕事が終わるわけではありません。例えば、
M&A検討 → 補助金活用の検討 → 申請書類の作成・申請 → 採択・交付決定 → M&A実行 → 許認可の承継・変更・取得 → 会社関係書類の整備 → 事業承継 → PMI
という流れがあります。行政書士は、行政手続・許認可・官公署提出書類等を中心として、この流れの複数の場面で関与することができます。
行政書士だけですべてのM&A業務を行うわけではありません
ここは非常に重要です。M&Aには多くの専門分野があります。
| 業務領域 | 主な専門家 |
|---|---|
| 補助金申請書類の作成・申請支援 | 行政書士等 |
| 許認可・行政手続 | 行政書士 |
| M&A仲介・FA | M&A支援機関 |
| 財務DD | 公認会計士等 |
| 税務DD | 税理士 |
| 法務DD・訴訟性のある交渉 | 弁護士 |
| 登記 | 司法書士 |
| 労務手続 | 社会保険労務士 |
| 経営改善・事業計画 | 中小企業診断士・認定経営革新等支援機関等 |
M&Aは、これらの専門家がそれぞれの専門領域を担い、必要に応じて連携することが重要です。行政書士がM&A補助金の申請を支援することは、他士業の業務を否定するものではありません。
行政書士アヴァンセ法務事務所が提供するM&A・補助金支援
行政書士アヴァンセ法務事務所では、相続・事業承継・M&A・補助金・許認可・企業法務を、それぞれ別々の業務ではなく、企業のライフサイクルの中で相互に関連する業務として捉えています。特にM&A・事業承継については、案件に応じて次のような支援を行います。
M&A・補助金
- M&A補助金の活用可能性の検討
- 公募要領・対象要件の確認
- 補助対象経費の整理
- 申請内容・事業計画等の作成支援
- Jグランツによる申請手続の支援
- 採択後の実績報告等の支援
M&A・行政手続
- 許認可の承継可能性の確認
- 許認可の変更・新規取得
- 官公署への各種申請・届出
- 事業承継に伴う行政手続
M&A・企業法務
- 契約関係書類の作成支援
- 定款・議事録等の会社関係書類
- 事業承継に伴う各種書類の整備
また、弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・社会保険労務士・中小企業診断士等、他の専門家との連携も行います。
M&A支援機関としての視点
M&Aは「会社を買う」「会社を売る」だけの問題ではありません。経営者にとって重要なのは、M&Aによって、その後の事業をどう成長させるのかということです。そのため、
- M&Aのスキーム
- 補助金
- 資金調達
- 許認可
- 契約
- 事業承継
- 不動産
- PMI
などを一体として考える必要があります。行政書士アヴァンセ法務事務所では、M&A支援機関登録制度の登録事業者として、M&Aを検討する中小企業の皆様を支援しています。
よくある質問(FAQ)
Q1.M&A補助金の申請を行政書士に依頼できますか?
A. はい。16次公募の公募要領では、行政書士または行政書士法人に申請の作成を委任する場合が想定されています。ただし、申請者自身が申請内容を理解・確認し、補助事業計画について責任を持つことが求められます。
Q2.行政書士にM&A補助金の申請を依頼すると違法ですか?
A. いいえ。行政書士に依頼すること自体が違法なのではありません。むしろ16次公募の公募要領は、行政書士または行政書士法人に申請作成を委任するケースを明示しています。一方、行政書士または行政書士法人ではない者が、申請者に代わって有償で申請の作成を行うことについては、行政書士法違反に該当する可能性があるとされています。
Q3.行政書士の補助金申請報酬も補助金で支払えますか?
A. 16次公募の専門家活用枠では、申請の作成を行政書士または行政書士法人に委任した際の費用は補助対象外です。これは「行政書士に依頼できない」という意味ではありません。「依頼できるが、その報酬は今回の補助対象経費には含まれない」という整理です。
Q4.M&A補助金では行政書士に何を依頼できますか?
A. 補助金申請のほか、M&Aに伴う許認可等の取得・変更などについて相談できます。16次公募の補助対象経費にも、M&Aの最終契約書に基づき取得すべき許認可等の申請費用について、行政書士が支払相手として明記されています。
Q5.行政書士だけでM&Aを全部支援してもらえますか?
A. M&Aには、法務・税務・財務・登記・労務等、多くの専門分野が関係します。そのため、案件によっては弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、社会保険労務士、中小企業診断士等との連携が必要になります。行政書士アヴァンセ法務事務所では、案件の内容に応じて専門家との連携を行います。
Q6.M&Aをまだ検討しているだけでも相談できますか?
A. はい。むしろM&Aでは、「契約をする前」の相談が重要です。補助金を利用できる可能性がある場合には、公募要領や交付決定前の契約・発注等に関するルールを確認しながらスケジュールを組む必要があります。16次公募でも、補助事業への着手時期や専門家との契約について注意が必要です。
まとめ
事業承継・M&A補助金については、「行政書士はM&A補助金の申請ができない」と考える必要はありません。正確には、行政書士に申請作成を依頼できる一方で、行政書士への申請作成報酬は16次公募の専門家活用枠の補助対象外という整理です。
さらに16次公募の公募要領では、行政書士または行政書士法人による申請作成を明確に想定しており、行政書士でない者による有償の申請作成については、行政書士法違反の可能性についても注意喚起されています。つまり、「補助対象外」と「依頼できない」は違います。ここを正しく理解することが、M&A補助金を適切に活用する第一歩です。
M&A・事業承継・補助金についてご相談ください
行政書士アヴァンセ法務事務所では、相続・事業承継・M&A・補助金・許認可・企業法務を横断して、経営者の皆様の事業承継・M&Aを支援しています。
- 「M&Aを検討しているが、どこから手を付ければよいのか分からない」
- 「M&A補助金を利用できるのか知りたい」
- 「行政書士に補助金申請を依頼できるのか知りたい」
- 「M&A後も現在の許認可を維持できるのか確認したい」
- 「M&Aと事業承継を一体として相談したい」
このような段階からご相談いただけます。M&Aは、契約を結んでからではなく、検討を始めた段階で専門家に相談することが重要です。行政書士アヴァンセ法務事務所までお気軽にご相談ください。
参考・最新情報:事業承継・M&A補助金の制度・公募要領・申請手続については、必ず最新の公式情報をご確認ください。16次公募では、専門家活用枠について買い手支援類型・売り手支援類型等の公募要領が公開されています。日本行政書士会連合会も、補助金申請を行政書士の企業支援業務の一つとして案内しています。
