「中小企業激減」の本当の姿は?データで見る個人事業の減少と法人の増加|個人事業主の事業譲渡・法人成りという選択肢

事業承継M&A

中小企業の数は5年間で約21万者減少しましたが、減っているのは個人事業者で、会社(法人)はむしろ約14.6万社増えています。そして、個人事業であっても、事業譲渡によって事業を第三者に引き継ぐことができます。本記事では、統計データで中小企業の実態を確認したうえで、個人事業主の事業譲渡、法人成り(個人事業の法人化)、許認可・補助金のポイントを、事業承継M&A支援に携わる行政書士 松岡(行政書士アヴァンセ法務事務所)が解説します。

※本記事は2026年10月時点で公表されている統計・調査結果に基づいています。

ニュースやビジネス記事で、「中小企業の廃業ラッシュ」「5年間で20万者以上の中小企業が消滅」といった見出しを目にしたことはないでしょうか。

これから事業を立ち上げようとしている方や、個人事業主として売上を伸ばし「そろそろ法人化すべきか」と考えている方にとって、こうしたニュースは「今の時代、起業や事業拡大はリスクが高いのではないか」と不安を感じさせるものかもしれません。

しかし、ビジネスで大切なのは、イメージではなく実態(ファクト)を正しく認識することです。統計データを紐解いてみると、世間のイメージとは異なる「日本経済の新陳代謝」の構図が見えてきます。

目次

中小企業は本当に減っているのか?統計で見る実態

中小企業全体の数は減っていますが、その中身を見ると、減っているのは個人事業者で、会社(法人)は増えています。

総務省・経済産業省「経済センサス」を基にした中小企業庁の集計によると、中小企業の数は2016年の約357.8万者から2021年には約336.5万者へと、約21.3万者減少しました(出典:中小企業庁「中小企業の企業数・事業所数」)。なお、中小企業庁の統計では会社と個人事業者を合わせて数えるため、単位に「者」を使います。本記事でも、会社のみの数は「社」、個人事業者を含む数は「者」と表記しています。

一見すると「企業がどんどん倒れている」ように見えますが、企業数を「会社(法人)」と「個人事業者」に分けると、まったく逆の動きが起きていることが分かります。

区分2016年2021年5年間の増減起きていること
会社(法人)約161.0万社約175.7万社約14.6万社 増加小規模な法人の設立が活発
個人事業者約197.9万者約161.9万者約36.0万者 減少高齢化や後継者不在などで大幅に減少
合計約358.9万者約337.5万者約21.4万者 減少個人事業者の減少が全体を押し下げている

※大企業(約1万社)を含む企業数全体の数値です。会社以外の法人(医療法人・NPO法人等)と農林漁業は含みません(2024年版中小企業白書のデータを基に作成)。

数字が示す事実は明快です。全体の減少は個人事業者の減少によるもので、会社(法人)は14万社以上増えています。

大阪府でも、中小企業の数は2016年の約27.1万者から2021年には約26.2万者へと減少しています(出典:大阪シティ信用金庫「数字で見る大阪経済のツボ 大阪府の企業数について」、2024年版中小企業白書のデータを基に作成)。

一方で、新しく生まれる法人も増え続けています。東京商工リサーチの調査によると、2025年の新設法人は15万7,011社で、2008年の調査開始以来の最多を3年連続で更新しました(出典:東京商工リサーチ「2025年の新設法人 最多の15万7,011社」)。

個人事業から法人へ移行する事業者や、最初から法人形態で創業する経営者が、市場の新陳代謝を支えているというのが実態です。

個人事業でも事業承継M&Aはできるのか?

個人事業であっても、「事業譲渡」によって事業を第三者に引き継ぐことができます。

では、なぜ個人事業者は5年間で約36万者も減少したのでしょうか。大きな要因として、経営者の高齢化や後継者不在が挙げられます。

東京商工リサーチの調査によると、2025年の休廃業・解散は6万7,210件で過去最多となり、そのうち52.8%は直前期の決算が黒字でした(出典:東京商工リサーチ「過去最多の6.72万件、赤字企業率は47.2%」)。利益が出ている事業であるにもかかわらず、「個人事業だから、自分が引退したら畳むしかない」と考え、廃業を選んでいるケースは少なくないと考えられます。

そもそも事業承継とは?

事業承継とは、経営者が会社や事業を後継者に引き継ぐことです。引き継ぐ相手によって、主に次の3つに分けられます。

承継の種類引き継ぐ相手個人事業の場合の主な方法
親族内承継子どもなどの親族後継者が開業し、事業用資産を贈与・売買・相続で引き継ぐ
従業員承継役員・従業員後継者が開業し、事業用資産を売買などで引き継ぐ
第三者承継(M&A)社外の個人・企業事業譲渡契約により、事業を第三者に譲渡する

会社の場合は株式を譲渡する方法もありますが、個人事業には株式がありません。そのため、第三者への承継は「事業譲渡」の形をとるのが一般的です。

個人事業主の事業譲渡で引き継げるもの

「株式会社のように株式がないから、M&Aは無理」と諦める必要はありません。事業譲渡契約によって、次のような経営資源を第三者に引き継ぐことができます。

  • 店舗・事務所の内装や設備(いわゆる居抜き資産)
  • 顧客・取引先との関係
  • 技術やノウハウ、屋号・ブランド
  • 従業員(本人の同意を得たうえで、譲受人と新たに雇用契約を結ぶ)

事業を適正な価格で譲渡できれば、廃業費用をかけて事業を畳むのではなく、譲渡代金を受け取って引退するという道も開けます。なお、譲渡代金にかかる税金の扱いは個別の事情によって異なるため、税理士への確認が必要です。

これから創業する方にとってもチャンスになる

ゼロから店舗を構え、設備をそろえ、顧客を一から集めるには、大きなコストとリスクが伴います。しかし、引退を考えている黒字の個人事業から事業譲渡を受ければ、初期投資を抑え、売上や顧客がある状態から事業を始めることができます。

個人事業の退出が多いことは、見方を変えれば、これから事業を始める方にとって「良質な事業や設備を引き継ぐチャンス」でもあるのです。

個人事業から法人成りするメリットは?

法人成り(個人事業を法人化すること)には、社会的信用、税制・資金繰りの選択肢、将来の事業承継M&Aへの対応という3つのメリットがあります。

個人事業として始め、売上が軌道に乗ってきた経営者が直面するのが、法人成りのタイミングです。単に「税金対策になるから」という理由だけでなく、事業を拡大するための経営戦略として、法人化には大きな利点があります。

メリット内容
社会的信用の向上大手企業との取引口座の開設、人材の採用、金融機関からの融資などで、「法人格」の有無が評価に影響することがあります
税制・資金繰りの選択肢の拡大役員報酬の設計、退職金の準備、欠損金の繰越控除(法人は最長10年、個人の青色申告は3年)など、選択肢が広がります
将来の事業承継M&Aへの対応株式の形で事業の権利をまとめておくことで、将来の売却や後継者への承継を進めやすくなります

ただし、法人化すると社会保険の加入義務や、赤字でも法人住民税の均等割がかかるなど、負担が増える面もあります。法人化が有利になるかどうかは所得水準や事業内容によって異なるため、税理士への確認をおすすめします。

法人成りや創業で注意すべき許認可・補助金のポイントは?

法人成りや創業の際は、「許認可の手続き」と「補助金の活用」を早めに検討することが重要です。

落とし穴になりやすい「許認可の引き継ぎ」

「個人事業のときに取った許可があるから、会社を作ってもそのまま使えるだろう」――これはよくある誤解です。

許認可は、原則として個人事業主「本人」に与えられたものです。法人成りをすると事業の主体が個人から法人に変わるため、多くの業種では、法人として改めて許認可を取得するなどの手続きが必要になります。

業種によって必要な手続きは異なります。例えば、建設業許可は、2020年10月の建設業法改正により、事前に認可を受ければ個人から法人へ許可を引き継げるようになりました。一方、法人として新たに許可を取り直す必要がある業種も少なくありません。

手続きが間に合わないと、一時的に無許可で営業する状態になり、営業停止や罰則の対象となるおそれがあります。会社設立の検討と同時に、許認可のスケジュールを専門家と一緒に組み立てることが大切です。

成長を後押しする「補助金」の活用

国や自治体は、創業や事業拡大、事業承継を支援する補助金を用意しています。主な補助金は次のとおりです。

補助金主な対象
小規模事業者持続化補助金販路開拓、ウェブサイト制作、店舗改装など
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(旧ものづくり補助金)革新的な製品・サービスの開発、新事業への進出など
事業承継・M&A補助金事業承継M&Aに伴う設備投資や専門家活用の費用など
各自治体の創業支援補助金創業時の経費(自治体により内容が異なる)

補助金は返済不要の資金ですが、原則として事業を実施した後に支払われる「後払い」で、審査に採択される必要があります。公募要領に沿った事業計画書の作成が求められるため、専門家の知見を活用することが採択への近道です。公募の時期や要件は回ごとに変わるため、申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。

事業承継・M&A補助金の申請と行政書士の関わりについては、記事「事業承継・M&A補助金の申請は行政書士に依頼できる?|「行政書士には頼めない」は誤解、16次公募の公募要領を解説」で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q. 中小企業は本当に減っているのですか?

A. 中小企業全体(会社と個人事業者の合計)の数は、2016年の約357.8万者から2021年の約336.5万者へと減少しています。ただし、内訳を見ると減少したのは個人事業者で、会社(法人)は約14.6万社増加しています。

Q. 個人事業でも事業譲渡はできますか?

A. できます。事業譲渡契約によって、店舗設備、顧客との関係、ノウハウなどの経営資源を第三者に引き継ぐことができます。

Q. 事業承継とは何ですか?

A. 経営者が会社や事業を後継者に引き継ぐことです。引き継ぐ相手によって、親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)の3つに分けられます。

Q. 法人成りをすると、個人事業のときの許認可はそのまま使えますか?

A. 多くの業種では、そのままでは使えません。法人として新たに許可を取得する必要がある業種と、建設業のように事前の認可で引き継げる業種があるため、業種ごとに確認が必要です。

Q. 法人成りや事業譲渡の相談は、どの専門家にすればよいですか?

A. 許認可の手続きや事業譲渡契約書などの書類作成は行政書士、設立登記は司法書士、税務は税理士が担当します。当事務所では、必要に応じて各専門家と連携しながらご相談をお受けしています。

まとめ:個人事業の「退出」の裏側に、事業を引き継ぐチャンスがある

中小企業の数は減っていますが、減っているのは個人事業者で、会社(法人)は増えています。個人事業の退出が多い背景には高齢化や後継者不在があり、黒字のまま廃業するケースも少なくありません。

  • 個人事業でも、事業譲渡によって事業承継M&Aは可能です
  • 法人成りには、信用・税制・将来の承継のしやすさといったメリットがあります
  • 法人成りや創業では、許認可の手続きと補助金の活用を早めに検討することが重要です

事業承継M&Aの進め方については、記事「大阪の事業承継・M&A|支援制度・相談先を専門家の行政書士が解説」で、事業承継で大切にしたい考え方については、記事「事業承継で社長が最後に残すべきもの|数字より大切な「経営の引継ぎ」」で詳しく解説しています。

ご相談は大阪の行政書士アヴァンセ法務事務所へ

大阪市中央区本町の行政書士アヴァンセ法務事務所は、法務・行政手続きの両面から、経営者の皆様の事業の成長や承継をサポートしています。

当事務所は、中小企業庁のM&A支援機関登録制度における登録支援機関であり、一般社団法人M&A支援機関協会の会員です。また、大阪商工会議所の会員として、大阪・関西の中小企業を支援しています。

  • 「個人事業が軌道に乗ってきたので、法人成りを相談したい」
  • 「法人成りしたいが、今持っている許認可をどう引き継げばよいか分からない」
  • 「引退を考えている知人の店舗(個人事業)から、事業譲渡を受けて創業したい」
  • 「後継者はいないが、事業譲渡で事業を残したい」
  • 「創業や法人化に合わせて使える補助金を知りたい」

このようなお悩みがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。設立登記は司法書士、税務は税理士など、各専門家とも連携しながらサポートいたします。


監修: 行政書士アヴァンセ法務事務所 松岡(中小企業庁M&A支援機関登録済み/一般社団法人M&A支援機関協会会員)

投稿者アバター
松岡 博文
行政書士アヴァンセ法務事務所の代表行政書士 松岡博文です。 事業承継M&Aを中心に、中小企業の事業承継M&Aに関する手続き、関連する許認可申請などを支援しています。 当サイトでは、事業承継・M&Aに関する制度や法改正、補助金情報などについて、行政書士の実務的な視点から解説しています。
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