中小企業成長加速化補助金でM&A活用時に必要な法務手続き

中小企業成長加速化補助金でM&A活用時に必要な法務手続き

中小企業庁は2026年8月20日、「中小企業成長加速化補助金」3次公募(申請受付:2026年9月29日〜10月29日)の公募要領を公開しました。本補助金は将来の売上高100億円達成を目指す企業を支援する制度で、成長施策の一つとしてM&Aも位置付けられています。本記事では、この補助金を活用してM&Aによる成長を目指す経営者様に向けて、申請支援の相談先の整理と、行政書士に依頼できる法務手続きを解説します。

※本記事は2026年9月28日時点の情報に基づきます(公募要領は8月20日の公開後、8月31日・9月3日・9月18日にも更新されています)。制度の詳細・最新情報は中小企業庁の公式公募要領ページにて必ずご確認ください。

目次

中小企業成長加速化補助金の3次公募とは?

中小企業成長加速化補助金は、将来的に売上高100億円を目指して大胆な投資に挑む中小企業を支援する制度です。2026年8月20日に3次公募の公募要領が公開され、令和7年度補正予算分については今回の3次公募で終了する見込みとされています。

対象となる企業の主な要件は以下のとおりです。

項目3次公募の要件
売上高10億円以上100億円未満
直近3年の平均課税所得15億円以下
事業実施場所日本国内に本社・実施場所を保有
事業実施期間交付決定から14〜24か月以内

この売上規模からわかるとおり、本補助金は創業間もない小規模事業者向けというより、すでに一定の事業基盤を持つ中堅企業がさらなる成長投資(設備投資・新規事業・M&Aなど)に踏み出す際の支援制度です。

3次公募での申請スケジュールは?

3次公募の申請受付期間は2026年9月29日(火)から2026年10月29日(木)15:00までで、採択結果の発表は2027年3月下旬以降が見込まれています。

スケジュール時期
公募要領公開2026年8月20日
申請受付期間2026年9月29日(火)〜2026年10月29日(木)15:00
採択結果発表2027年3月下旬以降(見込み)
事業実施期間交付決定から14〜24か月以内

申請には投資計画書(40ページ以内)、投資計画書別紙、ローカルベンチマーク、直近3期分の決算書、金融機関による確認書などの提出が必要とされています。加えて、申請時までに自社の成長目標を宣言する「100億宣言」を「100億企業成長ポータル」上で公表済みであることが申請要件の一つとされており、申請と同時の公表では間に合いません。書類の準備とあわせて、早めの着手が重要です。

3次公募で特に注意すべき変更点は?

3次公募における最大の変更点は、賃上げ要件が審査・返還の判断に直結する点です。

  • 補助事業期間中および事業完了後3年間、従業員1人当たりの給与支給総額を年平均4.5%以上引き上げることが求められます
  • この賃上げ目標が未達成の場合、補助金の返還対象となり得ます
  • 3次公募からは、計画上の目標だけでなく「足下の賃上げ」の実績も審査対象に加わりました

M&Aによって組織や雇用条件が変化する場合、この賃上げ要件の継続的な充足が計画の前提条件になります。給与規程や雇用契約の整備は社会保険労務士の専門領域となるため、M&Aを検討する段階から社労士・税理士とも連携できる体制を整えておくことをおすすめします。

なぜM&Aが成長加速化補助金と関係するのか?

売上高100億円という目標を、自社の内部成長(オーガニックグロース)だけで達成するのは容易ではありません。そのため、他社の買収によって売上・事業基盤を一気に拡大する「M&Aによる成長戦略」が、100億円達成に向けた具体的な施策の一つとして紹介されています。中小企業庁・中小機構が運営する「100億企業成長ポータル」でも、成長加速化補助金や100億宣言企業の取組事例とあわせて、M&Aを含む成長施策の情報が発信されています。

つまり本補助金は、後継者不在企業を引き継ぐ「事業承継型M&A」だけでなく、成長企業が事業拡大の手段として他社を買収する「成長型M&A」とも結びつく制度です。実際にM&Aを補助事業の一環として実行する場合、投資計画書の作成とは別に、買収を実行する法務手続きが必要になります。

補助金の申請書類作成は誰に相談すればいい?

投資計画書やローカルベンチマークの作成など、補助金の申請手続きそのものは、認定経営革新等支援機関・中小企業診断士・税理士が中心となって支援する領域です。行政書士がこれらの財務分析や事業計画の数値策定を主体的に担うものではない、という点はあらかじめ整理しておく必要があります。

一方で、投資計画の実現手段としてM&A(他社の買収)を選ぶ場合、買収の実行段階では許認可の承継や契約書の作成といった法務手続きが別途発生します。この部分が、行政書士が専門的に対応できる領域です。

M&A実行段階で行政書士に相談できる法務手続きは?

成長加速化補助金の活用有無にかかわらず、M&Aを実行する際は次のような法務手続きが必要になります。

  • 許認可の承継手続き:建設業・運送業・介護事業など許認可を伴う業種を買収する場合、スキーム(株式譲渡・事業譲渡・会社分割等)によって許認可の承継可否や手続きが異なります
  • 契約書の作成:秘密保持契約書(NDA)、基本合意書(LOI)、最終契約書(株式譲渡契約書・事業譲渡契約書等)の作成・レビュー
  • 定款変更:買収に伴う事業目的の追加、機関設計の見直しなど
  • 株主総会・取締役会議事録の作成:M&Aの意思決定プロセスに必要な社内手続き書類の整備

なお、財務・税務デューデリジェンス(DD)や訴訟性のある交渉対応は行政書士の業務範囲外となるため、必要に応じて税理士・弁護士と連携し、窓口を一本化してご案内します。事業承継の文脈でのM&A実務については、「大阪の事業承継・M&A|支援制度・相談先を専門家の行政書士が解説」の記事でも詳しく整理していますので、あわせてご参照ください。

成長加速化補助金×M&Aを進める基本ステップ

補助金の活用とM&Aの実行を並行して進める場合、一般的には以下の順序で検討を進めます。

  1. 投資計画の方向性を検討:自社の成長戦略の中でM&Aをどう位置付けるか、認定支援機関・中小企業診断士・税理士と相談しながら整理する
  2. 買収候補企業の選定・交渉:M&A仲介会社やM&A支援機関登録済みの専門家と連携し、候補企業の選定からNDA・基本合意書の締結まで進める
  3. 法務手続きの実行:許認可の承継可否の確認、最終契約書の作成、定款変更など、行政書士が対応できる法務手続きを進める
  4. 補助金の投資計画書への反映・申請:確定した投資計画(M&Aの内容を含む)を投資計画書に落とし込み、認定支援機関等のサポートのもとJグランツで申請する
  5. 交付決定後の賃上げ計画の実行・モニタリング:事業完了後3年間の賃上げ要件を継続的に満たせる体制を、社労士とも連携して整備する

このように、成長加速化補助金の活用とM&Aの実行は別々の専門家が分担するプロジェクトになるため、早い段階から関係する専門家同士の連携体制を作っておくことが、スケジュールを遅らせないポイントです。

よくある質問(FAQ)

Q. 行政書士に成長加速化補助金の申請代行を依頼できますか?

A. 投資計画書やローカルベンチマークの作成など、財務分析を伴う申請書類の作成支援は、認定経営革新等支援機関・中小企業診断士・税理士が中心となる領域です。当事務所では、成長施策としてM&Aを選択する場合の許認可承継・契約書作成などの法務手続きをご相談いただけます。

Q. 成長加速化補助金は事業承継型のM&Aにも使えますか?

A. 本補助金は売上高10億〜100億円未満の企業を対象としており、後継者不在企業を引き継ぐ事業承継型M&Aよりも、既存の中堅企業がさらなる成長のために他社を買収する成長型M&Aとの親和性が高い制度です。自社が対象要件を満たすかどうかは、最新の公募要領でご確認ください。売上高がこの要件に満たない小規模事業者様の場合は、「持続化補助金は最大250万円!第20回公募のスケジュールと申請のコツ【2026年最新】」の記事で紹介している制度が選択肢になります。

Q. M&Aで許認可を引き継げないケースはありますか?

A. スキーム(株式譲渡・事業譲渡・会社分割等)や業種によって、許認可が自動的に引き継がれない場合や、承継のための別途手続きが必要な場合があります。買収スキームを検討する初期段階で、許認可の承継可否を確認しておくことをおすすめします。

Q. 申請から採択発表まではどのくらいかかりますか?

A. 3次公募は2026年9月29日〜10月29日が申請受付期間で、採択結果の発表は2027年3月下旬以降が見込まれています。M&Aの相手企業探しや契約締結には別途時間がかかるため、投資計画とスケジュールは余裕を持って設計する必要があります。

まとめ

中小企業成長加速化補助金の3次公募は、売上高10億〜100億円規模の企業がM&Aを含む大胆な成長投資に挑む際の後押しとなる制度です。ただし、投資計画書の作成など申請手続きそのものは認定支援機関・中小企業診断士・税理士の領域であり、行政書士が専門的にサポートできるのは、M&Aを実行する段階での許認可承継・契約書作成・定款変更といった法務手続きです。

当事務所は中小企業庁のM&A支援機関登録済み・(一社)M&A支援機関協会会員の専門家の行政書士が在籍し、成長施策としてのM&Aを検討する企業様の法務手続きをサポートしております。認定支援機関や税理士など他の専門家とも連携し、窓口を一本化したご相談が可能です。M&Aの実行段階でお困りの際は、お気軽にご相談ください。

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