日本政府によるM&A推進戦略の背景には、中小企業の深刻な後継者不在問題があります。この問題が放置された場合、「2025年問題」として約22兆円のGDPと約650万人の雇用が失われると試算されており、M&Aは事業継続と雇用維持のための不可欠な手段と位置づけられています。さらに、M&Aは単なる「守り」の事業承継に留まらず、企業の生産性向上、国際競争力強化、「売上高100億円超企業」の創出といった「攻め」の成長戦略としても期待されています。

政府はM&Aを促進するため、以下の具体的施策を講じています。

1. 法的・制度的基盤の整備: 「中小M&Aガイドライン」の改訂や「M&A支援機関登録制度」により、市場の透明性と支援の質の確保を図っています。 
2. 資金・税制支援: 「事業承継・引継ぎ補助金」や、納税猶予割合100%の特例を設けた事業承継税制、日本政策金融公庫による融資などで財務的負担を軽減しています。 
3. 人材育成・マッチング支援:「アトツギ甲子園」や地域金融機関と連携した支援で、経営者の意識改革とマッチング機会の創出を促しています。
   
   これらの施策によりM&A件数は増加していますが、M&A支援の質、既存債務における経営者保証の解除、そしてM&A後のPMI（事業統合）の成功に向けた支援強化が今後の課題です。